親御さんの孤独~対話の力~

人との対話

はじめに

今回のテーマは「親御さんは話したい、親御さんは孤独である」ということです。

このブログを読んでくださる方の大半はきっと現在進行形で育児中の方(当事者の方もいるかもしれませんが)かと思います。

お子様のこと、話すのって大変かと思います。

やっぱり比べてしまったり、凸凹あったりするといわゆる一般育児のあるあるとはツーカーにならず、もやもやしてしまったり、伝え方に困ったりということもしばしばではないでしょうか。

界隈の親御さんに少しでも会話というガス抜きを。今回はそんな話です。

親御さんは話したい

先日のインタビューに限らずですが、親御さんと話すと本当にどの方もわが子の話になると本当にいつまでも話が続きます。

すみませんねこちらの話ばかり、と遠慮を挟んでくださる方もしばしばいらっしゃって、私としてはそれを聞きにわざわざ時間をとっていただいていたのでウェルカムという感じだったのですが、本当に話が尽きないのだろうな、と思いました。

もっとも、これは一対一で話していたからというのも大きいかもしれないです。これが多数人で話していると、よく話す方とそうでない方はどうしても別れやすいでしょうし、各々の話すペースも違います。一対一よりも出てくる話題も多くなるでしょう。

ただ、そもそもSNSで他の保護者の方との交流を求めているくらいの方ですから、話すことが全くない人なんているわけないんですよね。

育児に限らず、心温まる話にせよ、愚痴にせよ、誰かが聞いてくれるだけで、そして同じ思いをしている人が自分以外にもいると分かるだけで、癒されるものはありますよね。

もちろん現在進行形で悩んでいることに関しても、既存の枠組みに対し、自分には何ができるだろうかと真剣に考え、良い案があれば明日にでも取り入れたい、そんな意志が伝わってくることもしばしばです。

一方で、子育てしたことの無い私が言っても説得力があるのかもわからないですが、界隈の子育てというのはとかく孤独なものなのではないかな、と思います。

先人の知恵が伝わるようで伝わらなかったり、あるあるネタが絶妙に共有できなかったり、正直に話そうと思うとなんだ?自慢か?もしくはウチの子ちゃんがとにかく大事なモンペか?ととらえられてしまったり…。親御さんご本人も嘘をつかずいかに齟齬なく話せばいいのか…その表現をすごくすごく考えていらっしゃる方ばかりでした。

話す力の例~真美ちゃんのお母さまのお話~

ここで一つ、手前味噌な話にはなってしまいますが、かつて私が家庭教師を担当した真美ちゃん(仮名)の話をします。真美ちゃん自体もとても面白い子だったのですが、ここではお母さまとの関わりメインで書いていきます。

真美ちゃんの指導を開始したのは彼女の中学受験の4か月ほど前。

どうも家庭教師のメインの先生が既に一人、その先生の宿題を見る担当の別の先生が追加でもう一人…つまり私以外にも二人の先生がすでについているようなのでした。

やばい案件かもしれないそういうご家庭もあるんだなァと思いつつ、とりあえず第三夫人としてどういう親子なのか様子を見てみることに。

正直言うと、お母さまの第一印象は「ずいぶん子供を低く言う方なんだなぁ」というものでした。

ぶっちゃけ私はそこまで難関校を目指すような子たちを教えてきてはいなかったので、「先生ホントうちの子勉強しなくて、びしっと見てやってください」みたいなことは割とどのご家庭からも言われてきたのですが、それにしたって「真美は何やらせてもダメで…」という、なかなかの辛口っぷりでした。

真美ちゃん自身、基本的に根明で友達も多い。それこそどこでだってやっていけるような愛嬌のあるバリバリ定形っ子なのですが、こと勉強となると「だって真美バカだもん」とやりたがらない、そんな子でした。

バカだもんかぁ…沢山言われてきたんだろうなかわいそうに。こうなったらこの私がお母さまを叩き直してやんよ!とりあえずちゃんと仕事はする人間だと分かってもらうところからだよね。。。と仕事をしていると、段々保護者の方への報告も気心知れたものになってきます。

ある日の指導終わり、お母さまは学区の公立の中学校は治安が悪く、だからほとんどの6年生は受験するのだということを話してくれました。ママ友づきあいを考えると確かに迂闊に言うことではないような気がすることもあった記憶です。

そして、お母さまは中国出身の方だったので日本の中学受験事情にも疎かったのです。

ああ、それは不安だったろうなあ、と思いました。真美ちゃんは第一子ですし、でも公立中に通わせたくないとなるとやはり受験するしかないでしょう。分からないことだらけだったはずです。

お父様もお仕事でご多忙な様子だったこと、そして今までなかなか成績が上がらなかったことを考えると、お母さまの当初の険しい表情にも合点が行きました。それに、身内に対してとても愛情深いお方なので、そのエネルギーが怒りに転じてしまっていたのかもしれないなあ…などと私は一人帰り道で考えて居ました。

このような話を聞いていくと、だんだんお母さまの顔は険しさが取れて穏やかになっていくのが分かりました。それに、真美ちゃんに限らず、ある程度の時間いっしょにいればその子の良いところはなにかしら見つかりますので、そのような話は都度するように心がけました。ついでに言うとこの間にも時給が発生していたので私は私でホクホクしていました

自分で言うのも何ですが、真美ちゃんのことを勉強面でここまで褒めたり掘り下げたりしたのは私くらいだったでしょう。逆にこちらの長話をよく聞いてくださる時点で、いや、家庭教師を雇っている段階で、親御さんが娘に関心が無い訳ないんだよなという感じですよね。

お母さまの真美ちゃんに対する当たりが柔らかくなっていったのは傍目にもわかりましたし、それに伴って(これは指導の効果もあったと思いますが)真美ちゃんはもう自分の事を「バカだもん」とは言わなくなり、解ける問題の数を着実に増やしていきました。

私自身は学区の中学校の治安や真美ちゃんそのものを変えることなんてできません。しかし、こうやって第三者として話すだけでここまで状況はよくなるのだなあということに私自身が驚いたのです。

真美ちゃんは無事に志望校に合格し、その1週間ほど後にお母さまと最後のご挨拶をした際、

「まる先生のおかげで、真美と仲良くなれた気がします。それが一番嬉しいです」

と言っていただいたことを、私はずっと覚えていると思います。

おわりに

ギフテッド、凸凹界隈では、おそらく日々の悩みや相談をし合える方というのは普段なかなか出会えないのではないかな、と思います。その分気が合う方に出会えた時の出力は大きい気がします(お子さまがそうであるように)。

今回例に出した真美ちゃん自体は凸凹っ子という訳ではないですが、それこそ親をやること、子供について話すことはいろいろと大変なのだなと感じたことについては、本当に今日の読者の皆様と何ら変わりないことなのではないかと思います。

家庭教師として来た人全員が私と同じようなふるまいをするかは何とも言えませんが、子供だけでなく親御さんにも、どこか普段の家庭やお仕事先とは違う話し先があると良いのだろうなー、と思ってこの記事を書きました。

では、今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!

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