【質問回答】他の人から抜毛を指摘された時のフォローについて

抜毛症

はじめに

先日(2023年5月)、抜毛症や爪噛みといった現象に関して色々お話する、というスペースを開催しました。一人ではなく、ネイリストかつ爪噛み治療のプロフェッショナル、という方と共同での開催でした。

想定よりずっと多くの方がいらしてくださり嬉しさ半分、驚き半分でした。。15人位、多い時は20人位だったかもしれません。

また、対話の内容に関し、コメントも沢山いただくことができました。
私の知らなかった爪噛みの話し、抜毛との共通点・相違点、それぞれの方のお話、日々の過ごし方・・・どの話題も大変興味深かったですし、何より自分以外の方と抜毛や爪噛みといった話題でつながることができたのが嬉しかったのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回はその中でいただいたコメントのうち、抜毛や爪噛みを保護者の方が見守る時、他の方から何か言われた時のフォローをどうするかについてお話ししていこうと思います~。

シチュエーション想定

まず、誰からどのようなことを言われるか。

今回、当事者は中学生くらいまでのお子様と想定して進めていきます。
これくらいの年齢ですと、世界はそんなに広くないことが大半でしょう。
家族以外だと、直接接する人というのは学校の生徒や先生、塾など習い事先の同年代や先生くらいではないでしょうか。
抜毛症に関してはたまに美容院の方が加わりますね。

「何か言ってくる人」というのは大体この中の人達かな、と思います。

また、言われることとしては、抜毛や爪噛みといった行為は一般的には奇妙に映る行為ですので

「髪抜くのとか爪噛むのやめなよ」
「なんでそんなことするの?(やめたほうがいいよ)」
「気持ち悪い」

といった内容が一般的かなー、と思います。
いやー書いてて心が痛い。

正直、当事者自身なぜ自分が抜毛やら爪噛みやらをしているかなんて言語化できませんから、自分自身でもそうだよなあ、と思いながらそのまま自己嫌悪に陥る、という流れが出来上がってしまいます。

ちなみに、同年代が本人に火の玉ストレートで言うのは小学生、あっても中学生前半位までなのではないかなぁ・・・と思います。
それ以降になると、気付いたとて「触れてはいけないもの」として扱われる肌感です。周りも少しずつ大人になっていくのです。

フォロー前提1:当事者でないことへの理解には限度がある


フォローの詳細に当たる前に、言う側の前提にも触れていこうと思います。
まず、当事者と接する人は、正直当事者の気持ちなんてわからない、というのはしょうがないというスタンスで臨むのがいいかな、と思っています。

大人であれ子供であれ、大体抜毛や爪噛みという行為について非当事者は詳しい訳ではありません。

だって本人たちにとっては特に縁の無い行為ですし、自分事としてイメージする機会も無いでしょうから。もちろん抜毛なり爪噛みなりの知名度が高まることは大事だとは思うのですが、限界はありますよね。

フォロー前提2:レッテル問題

また、スペース内でも話題に上がったのですが、抜毛や爪噛みは一般的には当事者の感覚はともかく病んでいる、常軌を逸しているというレッテルが張られがちな行為というのは重要な観点でしょう。

このようなレッテルの結果、言う側(特に小学生位まで)としては「自分は変なことをしている奴に正しいことを言っている!」という感じになってしまうのですよね。

正義の鉄槌です。勇者の剣です。

ただ、これあまり出回っている情報ではないと思うのですが、当事者からしても、100%ストレス要因で行動に移すわけではないんですよねえ。。

私は安心を得たい:ストレスが7:3くらい、という話をスペースではお話させていただいたくらいです。もっとも、この割合は人によっても全然違うとは思いますが。

フォロー前提3:保護者ご自身が自らを責める構造にもなりがち


最後に、抜毛、爪噛み当事者の保護者の方が自身の子育てが悪かったのでは、ととらえてしまいがちという構造であることも事前知識として入れておくと良いかもしれません。

親御さん、というか家庭環境が原因というケースもよくあるとは思うのですが、当事者本人の気質とのかけ合わせで起きる現象である以上、どうしてもなりやすい子・そうでない子はいます。
その上上記のようなレッテルの話もありますし、見た目にも響くとなると、

自分の育て方が悪かったんだ・・・子供に負担をかけてしまった。もっと沢山話を聞いて優しくしないといけなかったのでは・・・

と感じてしまうことは自然なのではないかと思います。
少なくともこの記事を書いている時点では、ネットや書籍で抜毛症や爪噛みについて調べるとどうしても上記のような解釈になるのが自然です。


ただ、当事者は、親を責めることを目的に行為に及んでいるわけではありません。よく言われるストレス解消や沢山話を聞くのが対策というのも、間違いじゃないです。が、各々にとっての最適解の幅が広すぎて、そのままでは何の情報にもなっていないのではないでしょうか。

占いで「あなたは真面目で人の期待に応えるのが好きな反面1人の時間も大事」
なんて言われて信じてるのとそんな変わらない情報量だと思いますよ。

誰だって優しくされたいしストレス解消したいし話聞いてほしいじゃないですか。で、それに輪をかけて、なんか言われても、「で、どうやって?」になるという。

もちろん明らかにその子に割く時間や労力が足りてない、なんて事も往々にしてあると思うんで一概には言えないですが、結局ストレス減らそうが話を聞こうがやる子はやります笑
そのうちの1人がネットの片隅でこうして文章を書いていたりします笑笑

ともかく、当事者からすると、親が世間と同じスタンスで自分の事を責めないということは大分救われます。そのためには大前提親御さんがご自身を責めていないという土台も必要だと思うのです。

ガワだけ見ていると正直これが一番難しい気もしますが、「ストレスなくす、子供にやさしく」してもなーんかしっくりこない、ということって全然あると思います。

フォロー1:「自分で自分のバランスを取ろうとしているんだよ」

さて、上記の前提を元に具体的なフォローに入っていきます。
正直、「これを言えば絶対に正解!」という言葉はありません。
当事者のお子さんのメンタリティと彼ら彼女らをとりまく環境とのかけ合わせによって、無限のかけ合わせがあるものですから。

ただ、個人的にはある程度方向性はあるかなー、と考えております。
1つ目は、抜毛なり爪噛みというのは「自分の頭の中で未消化な何かを外に出さないようにしている」という考え方。

特に生来の気質ゆえに自分の感情が言葉になりづらかったり、物理的精神的に退屈なことがストレスになりやすい子は、そのような傾向にあるのかな、と思います。

とはいえ、そのモヤモヤを他者にぶつけたりしたら、友人は減るわ自分の評価は下がるわで良いことはありません。
もし、本人もそれを分かっていて気づいたら自分に向かっていた。というパターンが当てはまる子でしたら、「あなたの抜毛なり爪噛みは自分でバランスを取ろうとしている証拠。見ている側からすると不可解だろうけど、それを理由に自分を責めないでね」というメッセージは安心感や納得感につながるのではないかな、と思います。

もし持って行っても良さそうであれば手でいじれる何かを教室に持ち込む等にもつながるかもしれません。
スペースではスクイーズが話題に登りましたね。

スクイーズは柔らかいゴムでできた5~6cmほどの手でいじるおもちゃです。
リンク先では動物の形ですが、調べると他にも色々な形があるようです。

画像
リンク先よりスクショ

フォロー2:「いざという時は親の方から事情を話すよ」

これは子供相手というよりは大人に何か言われた時のフォローになります。

対先生に限らず、基本的に子供の立場は弱いです。
抜毛や爪噛みという文脈に限らず、大人は最終的に子供をねじ伏せることができてしまうことを子供は知っています。
ましてや大人ですらイメージでしか考えないようなマイノリティな要素に関する内容なんて、子供の口から言って何になるというのか、というのが正直な肌感です。
とはいえ、その事情1つで世の大人に対し懐疑的になってしまったら悲しいですよね。そんな時、同じことを伝える機会があったら同じ大人が見方をする、といってもらえたらどんなに救われるでしょうか。

世の中は、何を言うかではなく誰が言うかなのです。
ここで大事なのは、「絶対担任には理解してもらう」ということではなく、いざという時に大人が自分側についてくれる、ということなのです。
これは同級生にはできない協力の仕方です。

おまけ:美容院について

ちなみに美容院の方に関しては、もし親御さんから見て「うちの子は頭を見れば髪を抜いていることがわかるな」という感じであれば施術者にその旨を事前に伝えても良いと思います。web予約などの際に備考欄に記載するのでも良いでしょう。
施術者が抜毛という概念を知らないと、マジで無邪気に「ここの部分薄いですね?」とか言われてしまうことはあるので。。


あと、1000円カットでも良いので一人いい感じの対応をしてくださる方がいたらその方を指名するようにした方が申し送りも少なく済みますし、本人も安心できると思います。やっぱり、相手によって反応が変わる要素なので人が変わるとその点不安ではあるんですよね。

ちなみに私は「この部分もともと薄めなので分け目で目立たないようにしてください」くらいは言えたのですが、結局抜毛症の事を話せた美容師さんはいませんでしたね・・・。ブログにまで書いているくらいではあるのですが、やっぱり美容院ってお洒落な場なので、抜毛症というトピックを出すのはどんなに服装やメイクでオシャレしていても躊躇してしまう、という心理はありました。

おわりに

抜毛や爪噛みはいずれも具体的な目標を伴った自己完結没頭の世界で、フラストレーションから逃れたり多動を逃す手段になる、と私は考えています。

とはいえ、言う側に詳細を逐一説明する必要はありません。
世の中一般的には少数派な感覚であることには変わりありませんし、指摘をしているということは自分の事を正しいと信じて疑っていないことが大半でしょうから。
とはいえ、もしあまりにも一人から繰り返し言われるということがあればそれは担任であったり相手の子の親御さんに事情を伝えるというのが効果的なケースはあるかもしれないです。あくまで、当事者であるお子様が親の事を味方だと認識していることが大前提ではありますが。

ちなみに私は小学生の時に折り合いの悪かった当時の担任から、髪を抜くのはやめなさい、と帰りの会か何かで言われたことがあります。どう答えたかは覚えていないのですが、言うにもやり方はあるよな、大人気の無いいやがらせだなと思った記憶があります。

私の抜毛自体は中学受験での親からの指導によるストレスという明確な要因があるので、まぁ、家が原因なのですが笑
それはともかく、親にその話をしたところ、さすがに担任と言えどひどいことをするねと返ってきた時がありました。少なくともその時は、ある一線から先は親は守ってくれるのかもしれない、と感じたものでした。
10年以上前の出来事ですが、きちんと覚えています。


また、最後になりますが、今回のスペースの共同開催者の方のブログはこちらです。
主にお子様が爪を噛む保護者の方目線のブログです。噛んだ後の爪のケアに関する内容が主な内容ですが、脳の凹凸を持つ子やその向き合い方など、私のnoteとの親和性も高い内容が非常に解像度高く書かれているすてきなブログです。
もしご興味ある方はぜひこちらもご覧になってみてください。

今回も、ここまで読んでくださりありがとうございました!

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